「アーサー王の死」トマス・マロリー(抄訳)

アーサー王の死 (ちくま文庫―中世文学集)
トマス・マロリー William Caxton ウィリアム・キャクストン 厨川 圭子 厨川 文夫
筑摩書房
売り上げランキング: 48053

中々読めなかった。アーサー王は特殊な出生を持つ、即ち浮気によって。後に結婚することになる王と王妃の間だけれどもなぜそれを待たずに関係を持ったのかはまず問題だった
またランスロット卿も問題的だ。主に意味を生み出すナラティブにおいて。普通に読めば彼がアーサー王の王妃と関係を持っているとしか読めないのだけども、その浮気にも関わらず彼は偉大な騎士で、アーサー王よりも徳をもつという部分がある。また自らが潔白であると宣言したりもしているのだ
本書未収録の「トリスタンとイゾルデ」もまた恋物語で、円卓の騎士トリスタンは恋の薬によって浮気の恋に落ちる。岩波文庫があるけれども作者が違い内容も違う。
当時の情勢を元に説明するしかないのだろうか。かなり強引に近づけるとロマン派に親近性をもつような、抑圧の時代の文学は逃避へと向かうとは確かグラムシか。
マーリンは偉大な預言者だけれども恐らく省略された章において退場している。自らの死についての不吉な予言「生きたまま埋められるという」云々、アーサー王を中心として省略された編集といえるだろう。元々はいくつかの独立した(恋)物語だったのが綜合されたと解説にある。もともとマロリーに全てが尽くされるわけでもないのだろうし、それにしても多分半分以下に減らされているので何ともいえない。全部読んでみないとこれ以上はわからないだろう。

アーサー王物語〈1〉
アーサー王物語〈1〉
posted with amazlet at 09.12.05
トマス マロリー
筑摩書房
売り上げランキング: 58353
全訳があるけれども高価い。文庫ではないらしいです。
バーセルミ「王」の為に読んだのだけれども、返って疑問が増えてしまった。近松門左衛門ゴダールマゾッホやサドやアヴェ・プレヴォーなどにおいて各々愛が表現されて差異を顕にしているようにマロリー的な愛がある。僕にはそれはずいぶんと近代的に思える。断言はできないけれど。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%83%BB%E3%83%9E%E3%83%AD%E3%83%AA%E3%83%BC