2011-01-01から1年間の記事一覧

レトリック入門

第一部第1章、「レトリックの「発見」」で著者の野内氏は古代から現代に至るレトリックの歴史を簡潔に纏めている。現在のところ、レトリックとは「弁論術」(雄弁術)と「修辞学」という二つの異なった意味を表す。これは古代、キケロの時代の弁論術の五部門…

中身のない人間:ジョルジョ・アガンベン

各章の要約については、岡田氏による解説(191-202)でなされているので、立ち入らないことにする。本書でアガンベンは、近代の芸術論を参照しながら、それが古代の受容とことなるのはなぜか、という問いをたてる。ヴィントがいうように、プラトンにおいて芸…

技術と時間2 方向喪失:ベルナール・スティグレール

このエントリーは技術と時間1の続きです。 はじめに 一巻の冒頭で技術は非思考である、と言われていた。なぜ技術の思考が必要なのかを示しつつ、同時に、本書は技術の思考を行う。本巻の「序」では前巻の思考が簡潔に捉え直されている。スティグレールは繰り…

技術と時間1 エピメテウスの過失:ベルナール・スティグレール

初めに 本書はこみいった叙述ではないものの密度が高く、その各論に深入りしてゆくと、全体的な把握を失いかねない。この記事ではとりあえず大要の把握を目指す。スティグレールの思考はハイデガーやデリダを引き継ぎつつ、第一章で見られるような技術進化の…

イコノロジー研究:エルヴィン・パノフスキー

イコノロジー研究〈上〉 (ちくま学芸文庫)posted with amazlet at 11.04.17エルヴィン パノフスキー 筑摩書房 売り上げランキング: 164126Amazon.co.jp で詳細を見る「イコノグラフィーは美術史の一部門であって、美術作品の形に対置されるところの主題・意…

仏像学入門:宮治 昭

仏教美術の起源は、在俗の信者の信仰と関わる。彼らは釈迦に関わる聖なるもの、「チャイティヤ」を礼拝していた。彼らは(出家僧とは異なり)チャイティヤを礼拝することによって功徳をつもうと考えたのである。チャイティヤには三種、釈迦の遺骨である舎利…

暴力:スラヴォイ・ジジェク

本書を読むうちに、何か居心地の悪さのようなものを感じていた。本書で扱われる暴力には、大まかに言って三種類、一つはわれわれが「真っ先に思い浮かべる」ものである「主観的暴力」(犯罪、テロ、市民による暴動、国家観の紛争、など)、続いて主観的暴力…

シンボルの修辞学:エドガー・ヴィント

シンボルの修辞学 (晶文社・図像と思考の森)posted with amazlet at 11.03.30エトガー ヴィント 晶文社 売り上げランキング: 838086Amazon.co.jp で詳細を見る本記事では主に二つの章を読んでいく。それによって、本書における芸術の社会的側面と、現代の芸…

コンセプチュアル・アート:トニー・ゴドフリー

コンセプチュアル・アート (岩波 世界の美術)posted with amazlet at 11.03.30トニー ゴドフリー 岩波書店 売り上げランキング: 129492Amazon.co.jp で詳細を見る 「本書では、現在も進行中のコンセプチュアル・アートの歴史について、明快で生き生きとした…

シンボル形式の哲学:エルンスト・カッシーラー

シンボル形式の哲学〈1〉言語 (岩波文庫)posted with amazlet at 11.03.14E. カッシーラー 岩波書店 売り上げランキング: 157250Amazon.co.jp で詳細を見る シンボル形式とは何か 精神の主要な働きはそれに与えられる入力の客観化である。客観化作用の結果、…

象徴形式としての遠近法:エルウイン・パノフスキー

“象徴(シンボル)形式”としての遠近法 (ちくま学芸文庫)posted with amazlet at 11.02.23エルヴィン パノフスキー 筑摩書房 売り上げランキング: 103815Amazon.co.jp で詳細を見る本書ではギリシャからルネサンスに至る、遠近法の発達が分析されている。遠近…

移動の時代:カレン・カプラン

原題:question of travel,postmodern discourses of displacement 1 本書では移動にまつわる表象が取り上げられる。「この本で私が問題にするのは、当然と受け取られていることの多いいくつかのカテゴリーである」。本拠と外地、定位と移動、定住と旅、居場…

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明日から用事のため、次の更新は今週土曜以降になります。

ラディカル構成主義:エルンスト・フォン・グレーザーズフェルド

本書でグレーザーズフェルドはピアジェ認識論の読解を通じて、自らの認識論的立場、ラディカル構成主義の理論を説明している。二章終わりに、ラディカル構成主義の原理が提示されている。 ・知識は感覚やコミュニケーションを経由して受動的に受け取られるも…

古楽とは何か 言語としての音楽:ニコラウス・アーノンクール

古楽とは何か―言語としての音楽posted with amazlet at 11.02.04ニコラウス アーノンクール 音楽之友社 売り上げランキング: 100849Amazon.co.jp で詳細を見る 1 中世からフランス革命に至るまで、音楽は文化や人生の大黒柱の一つだった。音楽を理解すること…

私の書かなかった本:ジョージ・スタイナー

書かれざる書物は空虚以上のものである。なし終えた仕事に、皮肉で悲しげな動き回る影のように付きまとうのだ。書かれざる書物とは生きられたであろう人生のひとつ、できたであろう旅のひとつなのだ。否定は決定因子になりうると哲学は教えてくれる。否定は…

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明日も更新します。

哲学者は何を考えているのか:ジュリアン バジーニ , ジェレミー スタンルーム

本書は本職の哲学者や他分野の思索家ら22名へのインタビューをまとめたものです。各章には15〜20ページ程しか割かれないにもかかわらず、それぞれ密度の濃いものとなっています。 本書では多くのインタビュー本の体裁とはことなり、各人の伝記的記録、哲学の…

君は今夢を見ていないとどうして言えるのか:バリー・ストラウド

本書では、「われわれを取り巻く物理的世界について、われわれは何も知ることができない」という懐疑論的テーゼが検討される。この外界の知識への信頼が一挙に揺らぐこととなるテーゼと、その哲学的反対論の検討を通じ、われわれの持つ哲学的知識理論はどの…

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アップロードが遅れてしまいました。すみません。明日も更新します。