哲学

レトリック入門

第一部第1章、「レトリックの「発見」」で著者の野内氏は古代から現代に至るレトリックの歴史を簡潔に纏めている。現在のところ、レトリックとは「弁論術」(雄弁術)と「修辞学」という二つの異なった意味を表す。これは古代、キケロの時代の弁論術の五部門…

技術と時間2 方向喪失:ベルナール・スティグレール

このエントリーは技術と時間1の続きです。 はじめに 一巻の冒頭で技術は非思考である、と言われていた。なぜ技術の思考が必要なのかを示しつつ、同時に、本書は技術の思考を行う。本巻の「序」では前巻の思考が簡潔に捉え直されている。スティグレールは繰り…

暴力:スラヴォイ・ジジェク

本書を読むうちに、何か居心地の悪さのようなものを感じていた。本書で扱われる暴力には、大まかに言って三種類、一つはわれわれが「真っ先に思い浮かべる」ものである「主観的暴力」(犯罪、テロ、市民による暴動、国家観の紛争、など)、続いて主観的暴力…

シンボル形式の哲学:エルンスト・カッシーラー

シンボル形式の哲学〈1〉言語 (岩波文庫)posted with amazlet at 11.03.14E. カッシーラー 岩波書店 売り上げランキング: 157250Amazon.co.jp で詳細を見る シンボル形式とは何か 精神の主要な働きはそれに与えられる入力の客観化である。客観化作用の結果、…

象徴形式としての遠近法:エルウイン・パノフスキー

“象徴(シンボル)形式”としての遠近法 (ちくま学芸文庫)posted with amazlet at 11.02.23エルヴィン パノフスキー 筑摩書房 売り上げランキング: 103815Amazon.co.jp で詳細を見る本書ではギリシャからルネサンスに至る、遠近法の発達が分析されている。遠近…

移動の時代:カレン・カプラン

原題:question of travel,postmodern discourses of displacement 1 本書では移動にまつわる表象が取り上げられる。「この本で私が問題にするのは、当然と受け取られていることの多いいくつかのカテゴリーである」。本拠と外地、定位と移動、定住と旅、居場…

ラディカル構成主義:エルンスト・フォン・グレーザーズフェルド

本書でグレーザーズフェルドはピアジェ認識論の読解を通じて、自らの認識論的立場、ラディカル構成主義の理論を説明している。二章終わりに、ラディカル構成主義の原理が提示されている。 ・知識は感覚やコミュニケーションを経由して受動的に受け取られるも…

哲学者は何を考えているのか:ジュリアン バジーニ , ジェレミー スタンルーム

本書は本職の哲学者や他分野の思索家ら22名へのインタビューをまとめたものです。各章には15〜20ページ程しか割かれないにもかかわらず、それぞれ密度の濃いものとなっています。 本書では多くのインタビュー本の体裁とはことなり、各人の伝記的記録、哲学の…

君は今夢を見ていないとどうして言えるのか:バリー・ストラウド

本書では、「われわれを取り巻く物理的世界について、われわれは何も知ることができない」という懐疑論的テーゼが検討される。この外界の知識への信頼が一挙に揺らぐこととなるテーゼと、その哲学的反対論の検討を通じ、われわれの持つ哲学的知識理論はどの…

理性はどうしたって綱渡りです:ロバート・フォグリン

理性はどうしたって綱渡りですposted with amazlet at 10.12.25ロバート フォグリン 春秋社 売り上げランキング: 568681Amazon.co.jp で詳細を見る本書では理性に内在する問題、つまり「理性を働かせることそれ自体の危うさ」といわれる三つの危機、すなわち…

存在なき神:ジャン=リュック・マリオン

われわれは、神は何よりもまず存在しなくてはならないという、形而上学出身の哲学者たちと新トマス主義出身の神学者たちとが一致して主張している自明の事柄を、問題視しようとしているのである。 マリオンは「存在する神」ではなく存在なき神を思考しようと…

「不気味な笑い」ジャン=リュック・ジリボン、附:「砂の女」安倍公房

不気味な笑い フロイトとベルクソン 1 本書ではベルグソンの「笑い」とフロイトの「不気味なもの」の両読解を通じて、「夢と笑いの隠れた照応」を明らかにすることがめざされている。この両者を媒介する役目を果たしている概念がベイトソンが精神の生態学「…

ヴァーチャルとは何か?:ピエール・レヴィ

ヴァーチャルとは何か?―デジタル時代におけるリアリティposted with amazlet at 10.10.11ピエール レヴィ 昭和堂 売り上げランキング: 130548Amazon.co.jp で詳細を見る 本書の論点は三つある。すなわち、哲学的論点(ヴァーチャル化の概念)、人類学的論点…

言葉と心:中山康雄

言葉と心 (双書エニグマ)posted with amazlet at 10.09.01中山 康雄 勁草書房 売り上げランキング: 529212Amazon.co.jp で詳細を見る本書の狙いは明白で、著者の立場である語用論の視点から言語哲学の歴史を概説し、現代の分析哲学にも継続する、様々な問題…

思考の潜勢力:ジョルジョ・アガンベン

思考の潜勢力 論文と講演posted with amazlet at 10.08.29ジョルジョ・アガンベン 月曜社 売り上げランキング: 291484Amazon.co.jp で詳細を見る本書はイタリアの思想家ジョルジョ・アガンベンの八十年代から最近までの論文、講演内容をまとめたもの。三部に…

いかにしてともに生きるか―コレージュ・ド・フランス講義 1976‐1977年度 (ロラン・バルト講義集成):ロラン・バルト

いかにしてともに生きるか―コレージュ・ド・フランス講義 1976‐1977年度 (ロラン・バルト講義集成)posted with amazlet at 10.08.06ロラン バルト 筑摩書房 売り上げランキング: 375630Amazon.co.jp で詳細を見るロラン・バルトの晩年の講義。講義の音声の録…

心を自然化する:フレッド・ドロツキ

心を自然化する (ジャン・ニコ講義セレクション 2) (ジャン・ニコ講義セレクション 2)posted with amazlet at 10.07.17フレッド・ドレツキ 勁草書房 売り上げランキング: 643305Amazon.co.jp で詳細を見るとても面白かった。 ドレツキが表象主義テーゼと呼ぶ…

アガンベン入門:エファ・ゴイレン

アガンベン入門posted with amazlet at 10.06.24エファ・ゴイレン 岩波書店 売り上げランキング: 38539Amazon.co.jp で詳細を見るイタリアの哲学者ジョルジョ・アガンベンはその「ホモ・サケル」とその一連のプロジェクトによって知られる。本書ではそのプロ…

テイラーのコミュニタリアニズム:中野剛充

テイラーのコミュニタリアニズムposted with amazlet at 10.06.23中野 剛充 勁草書房 売り上げランキング: 418270Amazon.co.jp で詳細を見るチャールズ・テイラーはコミュニタリアンの一人として名を知られる。共同体主義者のうちロールズを正面から批判した…

欲望について:ウィリアム・B. アーヴァイン

欲望についてposted with amazlet at 10.06.20ウィリアム・B. アーヴァイン 白揚社 売り上げランキング: 272879Amazon.co.jp で詳細を見るもちろん、私たちはみな欲望をもっている。まず注意しておいてほしいのが、本書において欲望はもっとも広い意味で使わ…

近代日本の陽明学:小島毅

近代日本の陽明学 (講談社選書メチエ)posted with amazlet at 10.06.12小島 毅 講談社 売り上げランキング: 255400Amazon.co.jp で詳細を見る本書では日本近代において、陽明学がと水戸学どのような場面に関わっていたかが述べられている。また、本書は両学…

ならず者たち:ジャック・デリダ

ならず者たちposted with amazlet at 10.06.11ジャック・デリダ みすず書房 売り上げランキング: 194681Amazon.co.jp で詳細を見る車輪の比喩、円環の比喩から、デリダは始める。俎上に上げようとしているのは、強者の理性がいつでも正しいことになる、とい…

イメージの奥底で:ジャン=リュック・ナンシー

イメージの奥底でposted with amazlet at 10.06.08ジャン=リュック・ナンシー 以文社 売り上げランキング: 391057Amazon.co.jp で詳細を見る本書はナンシーのイメージ論を集成したものとなっているらしい。こういった本を読んだことは少なかったので語彙の面…

メルロ=ポンティ 触発する思想:加賀野井 秀一

メルロ=ポンティ 触発する思想 (哲学の現代を読む)posted with amazlet at 10.06.06加賀野井 秀一 白水社 売り上げランキング: 380039Amazon.co.jp で詳細を見る非常によい入門書。文章に堅苦しいところは殆ど無く、メルロの身体論を極めて明快に書いている…

リチャード・ローティ―1931-2007 リベラル・アイロニストの思想:大賀 祐樹

リチャード・ローティ―1931-2007 リベラル・アイロニストの思想posted with amazlet at 10.05.31大賀 祐樹 藤原書店 売り上げランキング: 396553Amazon.co.jp で詳細を見る本書はローティの哲学、そのリベラル・アイロニスト/自らの用いる概念図式に絶対性を…

「現代形而上学論文集」

精読する時間が無いので、短文で更新することにする。表面をなぞるだけのようで、なんとなく心地が良くないが、更新しないより良いと思うことにして、掲載しておく。「現代形而上学論文集」現代形而上学論文集 (双書現代哲学2)posted with amazlet at 10.05.…

ディスカバー・マインド!(心の再発見):ジョン・R・サール

ディスカバー・マインド!―哲学の挑戦posted with amazlet at 10.05.08ジョン・R. サール 筑摩書房 売り上げランキング: 365067Amazon.co.jp で詳細を見る非常に面白く読めた。何故かというと、本書でサールは自らの存在論と認識論の大枠を語っているからだ。…

リチャード・ローティ ポストモダンの魔術師:渡辺 幹雄

リチャード・ローティ ポストモダンの魔術師posted with amazlet at 10.05.02渡辺 幹雄 春秋社 売り上げランキング: 646200Amazon.co.jp で詳細を見る図書館で借りて読みました。本書は十年前にかかれたもので、ローティの標準化体系化を目指して書かれてい…

「行動を説明する」フレッド・ドロツキ

行動を説明する―因果の世界における理由 (双書現代哲学)posted with amazlet at 10.04.30フレッド ドレツキ 勁草書房 売り上げランキング: 495092Amazon.co.jp で詳細を見る正直に言うと、タイトルに惹かれて読んだのだけども、こういう風に本に接近するとき…

記号主義:N.グッドマン/C.Z.エルギン

記号主義―哲学の新たな構想posted with amazlet at 10.04.25N. グッドマン C.Z. エルギン みすず書房 売り上げランキング: 676797Amazon.co.jp で詳細を見るグッドマンの本は面白い。「世界製作の方法」では、「ヴァージョン」という概念を用いることで、藝…