リチャード・ローティ ポストモダンの魔術師:渡辺 幹雄

リチャード・ローティ ポストモダンの魔術師
渡辺 幹雄
春秋社
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図書館で借りて読みました。本書は十年前にかかれたもので、ローティの標準化体系化を目指して書かれていて、成功していると思う。読みやすいですし、分厚い本ですが精読しなければ一日もあれば読めます。ただ、現在は下に挙げる本が発売されており、評判もいい。とりあえず、ローティについて理解したことを書くのはその本かほかに数冊読んでからということにして、ここでは本書の構成のみについて述べることにします。後、今本書は絶版のようです。
まず一章と二章では、ロールズの思想をローティの読みに即しつつ辿り、相互作用を記述しつつローティの思想の大枠が導入されています。続いて三章ではローティの思想が既存の哲学的枠組みに当てはめられ、次いでその枠組み自体を無化してしまうローティの戦略が紹介されます。第四章では、ローティの政治理論が語られます。ローティの公私分離や、またアリストテレスから少なくともハイデッガーハーバーマスにまで見られるという政治と哲学との間の結びつき、哲学的人間観が政治体を決定するという立場に対してローティがどのように対抗しているのかなどが詳説されています。
第五章において為されているのは主に他の思想家との差異を、ローティの論文に即して際立たせつつ、アメリカの思想史を概観するという試みという風に要約できると思います。ただひとつひとつの討論的構成は少しすれ違っているようなところもあり、これは結局土俵が違うということなのだと思う。ここで対決させられているのは、フーコーデリダハーバーマスです。