「行動を説明する」フレッド・ドロツキ

行動を説明する―因果の世界における理由 (双書現代哲学)
フレッド ドレツキ
勁草書房
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正直に言うと、タイトルに惹かれて読んだのだけども、こういう風に本に接近するときは、なにか曖昧な期待のようなものがある。(期待の地平のような)この本の場合、特に僕のような動機を持つものの場合、それは行動についての広い枠組みのようなものが期待される、といえると思う。それでは本書はそれを構築しているだろうか。している。本書は行動から出発して、行為からではない、とp.7ですでに示唆されている。そして、行動とは何かが第一、二章で説明される。それは非常に広い概念として設定される。システムが自己の内部原因によって動くなら、それは行動といえる。外部原因によるなら、それは行動といえない。植物や機械、条件反射などは行為とは言い難いが、それは行動といえる。大体このようにして、行動の外延が定められる。
しかし先に進む前に、序文にもどって著者の意図を確認しておこう。こうかかれている。我々の「動きの原因」と「行動の理由」の間にはずれがある。これは生物学的(もしくは物理的?)説明と心理学的説明の間の差異に相当する。そしてこの二つの間に関係があるならどのような関係かを理解することが本書で意図したこと、とされている。
戻って第二章では行動が特定の出来事ではなくその過程であること、また過程の原因(背景条件)として、因果的理由としての(「なぜ」)責任を持つ構築原因と引き起こした原因としての起動原因の区別が導入される。
続いて表象システムの諸相が提示され、また信念を表象とした上で、信念がどのように説明上、役立つか、が考えられる。ここで表象と因果が接続されるのだけれども、ここでは簡単な機械の例が挙げられている。サーモスタットの行動として、ある温度になると暖房のスイッチが入るようにしたい、そのとき、われわれはスイッチに温度センサーを採用する。そのとき、センサーはある特定の温度を表象する。この表象関係のゆえに、センサーと暖房は因果的機械的に接続される。ここでは設計者の志向性そして目的が前提されており、それがp.146の図の「説明する」という語の話者になっているのだから、表象を真に行動の説明とするには不足だが、しかし示唆ではある、とドロツキはいう。そしてこの接続する行為、生物学的にいえば、性質の獲得をここから敷衍するかたちで、説明してゆく(のが第四章の内容である)。
第五章で一応、動物の表象システムにおいて信念、欲求、目標がどのように位置づけられるかの基本的図式は完成する。先の三つの条件はみな構築条件としてp.146の図の延長に位置づけられる。それは(構築条件として)なぜ動物がこのように行動するのか、という説明に役立つ、と主張される。最終的な図式をドロツキ図の形で与えてはいないが、文章で簡潔に表現されてはいる。(p.190)

それでは本書では一体なにが為されていたか。簡単にいえば、心理的な諸用語を物理的因果的世界において使用可能なものとして定義したことだ、と思う。本文を書くにあたっては、訳者解説も大いに参考にしましたが、誤読があれば全て私の責任です。また認知的全体論についての訳者解説における解釈も図式として整理の方法として面白いと思いました。では、このあたりで。