やし酒のみ:エイモス・チュツオーラ

アフリカの日々/やし酒飲み (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-8)
イサク・ディネセン エイモス・チュツオーラ
河出書房新社
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本作品の内容を細部に立ち入って語るのは、私にはふさわしくないように思える。そのため、この記事で作品について語るのですが、それはあいまいな印象とでもいうようなものになることを、まず断っておきます。

話の筋は、大金持ちの息子のやし酒飲みが、ひねもすやし酒ばかりを飲んで暮らしていたけれど、父とやし酒作りの二人が死んでしまい、宴会も開けなくなり友人も離れていってしまった。かわりのやし酒造りをさがしに様々な冒険をし、結婚や不死になるなどの経験経て十年の後故郷の町に帰るというものです。

ガルシア・マルケスなどに代表される魔術的リアリズムを思い起こさせるような突拍子の無さだけれども、僕はどちらかといえばずっと神話を思い出していた。Amazonのレビューなどをみても、アフリカの神話が下敷きになっているらしい。本作品の文体は、神話的な古層と(相対的にだが)現代的な語りとが、混じりあい登場している。だから魔術的リアリズムとは、似て非なるものなのだと感じたのだけれども、原文も読んでいないし、専門家でもないので判断は差し控えておく。

本作品には、人知を超えたものへの古代的な感情が通奏しているようだ。起こる奇妙な事象について、まったく説明は無いけれども、そこには論理が一本か何本か通っているのだろう。だけれども、カフカやキャロルの奇妙さと何かが異なっているようで、つまり語ることを許さないような圧迫もどこかに感じる。


本作品の印象をいくつか書いてみたけれども、百ページほどだし、もしかすると読んだほうが早いかもしれない。常に脱臼したような文体と次々と描かれる神話的風景は私たちを飽きさせないだろう。



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