空海の夢:松浦正剛
初版は二十五年前。ちくまから出ていた「空海コレクション」を手に取り、冒頭に録されている「秘蔵宝鑰」の序詞を読んで、どうしても空海を読まなければならないと感じたのだけれど、その前に入門用の本が無いかとおもい、編者の宮坂氏も挙げていた本書を読むことにしました。一見したところ、密教用語の頻発に圧倒されましたが、読み返してみると実に分かりやすく構成されています。松浦氏は「重重帝綱なるを即身と名づく」に注目し自身の編集概念やホロニクスに結び付けているのだけれども、そのような章の構成になっている。いわば惑星的になっている。書いてから気づいたけれど、惑星というのも大日如来を巨大な光源と見立てて惑星を各々ホロンに見立てることで著者が示唆していたところ。341ページを参照のこと。
また「華厳から密教に出る」そして続く「マンダラ・ホロニクス」の章で空海の世界観が綜合的に提示されており、そこでは唯識や禅と空海が近づきあいつつ離れあうような叙述を為していて、歴史のなかの空海を感じさせるものとなっています。
私は、今後他の入門書を参照しつつ、空海コレクションを読もうと思いますが、一、二とあるうちの一は今のところアマゾンでは手に入らないようですので、興味がある方は早めに本屋などで探されることをお勧めします。
空海コレクション 1 (ちくま学芸文庫)
posted with amazlet at 10.06.17