聖なるもの:オットー

聖なるもの (岩波文庫)
オットー
岩波書店
売り上げランキング: 25976

優れた解説が巻末にあるので、先にそちらから読んだほうがいいかもしれない。本書ではまずヌミノーゼを定義した後、現実の諸宗教においてそれがどのように顕れているかが説明される。
ヌミノーゼとは宗教の土台にある非合理的なものである。これに合理的なものが加わり、諸宗教が生まれる。例えば倫理は合理的な部分に属している。反対に、ある深さをもち、概念を用いては語りえないようなものは、非合理に属す。ヌミノーゼは形式的には神秘的、「まったく他なるもの」であり、質的内容においては斥力と引力をもつ。
また非合理性と合理性の間には次のような関係があるとされる。

非合理的なヌミノーゼは、われわれが先に列挙した合理的諸観念によって図式化されることで、聖なるものの完全な意味での複合的な範疇を生み出す。

(八章:類比事例)
つまり合理性の前に非合理性がある。この関係とおなじように、つまり合理性の外から合理性を規定するものとして、もうひとつ続けて性衝動があげられている。こちらを見ていくことにする。。つまり性衝動が概念に現れ、理性による分析を許すようになったとき、「性愛的なもの」の領域が成立する。だからといってそれは(性愛の理性への)完全な還元ではなく、理性によって用いられるときも、常に「より以上」を潜在している。同様に、宗教は合理性に還元不能である。
そうして非合理的なものと、それからうまれた合理的なものが相互浸透しあい、その諸変容によって諸宗教が生まれる。つまり宗教は人間の素質の歴史的な発現である。


言い訳になるが、巻末の解説が優れている以上、単なる反復に終わってはいけないと思いつつ書いていると、このような奇妙な記事になってしまった。オットーの非合理的なものと合理的なものを結びつける仕方を書きたかったのだけれど、上手く言ったとは言いがたい。申し訳ない。