デルタの結婚式:ユードラ・ウェルティ

デルタ地方
「デルタの結婚式」の舞台となっているのは、アメリカ南部ミシシッピー河の下流の東側のデルタ地方でミシシッピー州の首都ジャクソンの北方、ヤズー河沿いの地帯である。ここは南部でも有数な肥沃地で、綿花栽培の中心として榮、ヤズー・シティ、グリーンウッドなどはその中心市場であった。したがって、現在でも、南部の色彩を最も強く残しているところで、この小説に出てくる生活様式は、伝統的な南部人の代表的生活であるといえる。

(月報「読書の手引き」)
本作品では、アメリカ南部の生活と家族が描かれる。本書はフェアチャイルド家の娘ダブニーの結婚を通して、彼女の家族やその周辺の人々を全体的に描いている。本書には、いくつか読まねばならない部分がある。一族の人気者のジョージ、英雄的な扱いを受けており、実際叙述においてもそれを裏付けるものがなされており、また足が挟まった知遅れの姪モーリンを列車から救ったジョージが、黒人の少年同士の喧嘩を仲裁した場面は、同じく姪おじの関係にあるダブニーに恐怖を抱かせた。>>
ほかのフェアチャイルド家の人々は、ジョージとデニスについて、いつもいっしょくたにして――ジョージとデニスは優しいたちだとか、いやそうじゃないとか、そんなことしかいわない。でもその優しさだって、測り知れない深さの、眼に見える表面に過ぎないのかもしれない。あたしをこわがらせる、あらゆる暗黒の表面にすぎないのかもしれない。