7/11

「影の無い女」をはじめて読んだときに、難しい小説だなあ、と思った。この難しさは時間の二つの相、影の有無などの二つの世界の交錯と交代が象徴的にめまぐるしくなされることによるものだったように思う。昨日の記事は全体像が見えてから書いた、というようなものではなく、むしろ一歩一歩踏み進めながら読んでいくというようなものだった。そのため、途中冗長になった部分や、不備もあるかもしれない。記事の中に入れられなかったのでここに書いておくと、ホフマンスタールの本作品が刊行されたのは1919年。同じく解説に拠るが、彼の他の作品には悲劇的な調が漂うらしく、「メルヘン的散文」としてこの作品は特異だという。

騾馬に哀れみをうつす姫の視線を読んだとき、はじめはニーチェの馬に同情したという情景が思い浮かんだのだけれども、それらの関係はよくはわからない。もちろんニーチェにしてみれば騾馬の諾しかいうことはない、そのような動物的隷従は軽蔑すべきものだっただろうが。